ChatGPTをはじめとする生成AIが、急速に身近なものになっています。

仕事で使う大人だけではありません。すでに小学生や中学生の間でも、
生成AIは「ちょっと使ってみるもの」から、調べものや学習に使う身近な道具へと変わり始めています。

一方、保護者にとっては、
「宿題をAIにやらせるようにならないだろうか」
「自分で考えなくなるのではないか」
「そもそも子どもにAIを使わせていいのだろうか」
といった心配もあるでしょう。

私は普段、ITエンジニアとしてシステム開発に生成AIを利用しています。
その経験から考えると、子どものAI利用について重要なのは、
単純に「使わせる・使わせない」を決めることではないと思っています。

AI時代にむしろ重要になってくるのは、
「自分は何をしたいのか」を理解し、それを言葉にする力
ではないでしょうか。

すでに中学生の4割以上が生成AIを利用している

まず、子どもたちは実際にどの程度生成AIを使っているのでしょうか。

NTTドコモ モバイル社会研究所が2025年11月に実施した
「2025年親と子の調査」では、
全国の小学生・中学生1,200人とその親1,200人、計1,200組を対象に調査しています。
調査方法は訪問留置調査で、性別・学年・地域・都市規模の人口分布に比例して割り付けられています。

この調査では、中学生の生成AI利用率は4割を超え
前年と比べて約3倍、27ポイント上昇しました。

また、生成AIを利用している小中学生の用途では「調べもの」が最も多く、
小学生・中学生ともに7割を超えています
中学生では「宿題や課題」への利用も半数を超えました

一方、「学校の授業」で生成AIを利用している割合は小学生・中学生とも2割台でした。
学校で本格的に教わるよりも先に、家庭や日常生活の中で生成AIに触れている子どもが増えていることがうかがえます。

小学生でも、生成AIはすでに身近な存在になりつつあります。

ベネッセコーポレーションが2025年11月5日~6日に、
小学3~6年生とその保護者1,032組を対象としてインターネットで行った
「生成AIの利用に関する意識調査」では、
生成AIを「知っている」「聞いたことがある」と回答した小学生は74.7%でした。

さらに、生成AIを認知している小学生のうち、
「よく使っている」「ときどき使っている」「ためしに使ってみたことがある」を合わせると、
8割以上に利用経験がありました。

学校の授業や宿題で生成AIを使ったことがある小学生も36.9%に達しています。

生成AIは、すでに一部のIT好きな子どもだけが触れるものではなくなりつつあります。

AIを使うことで「考えなくなる」という心配は実際にある

ここで、保護者が感じている懸念も見ておきたいと思います。

同じベネッセの調査では、生成AIを使うことによる子どもの変化について、
保護者の65.2%がポジティブな変化を感じる一方、
49.3%がネガティブな変化も感じているという結果でした。

特に印象的なのが「思考力」です。

「自分で考える機会が減った」と感じる保護者は73.2%
それに対して「考える力が育っていると感じる」と答えた保護者は34.0%でした。

生成AIを使えば自動的に学びが深まるわけではない。
これは、AIを教育に取り入れるうえで無視できない点だと思います。

ただし、この数字を見て「だからAIを使わせないほうがいい」と結論づけるのも早いでしょう。

問題なのはAIそのものというより、
AIに何をさせるのか、子どもがAIとどのように関わるのか
ではないでしょうか。

「答えを聞く」より、「なぜ?」を聞けること

例えば、算数の問題が分からなかったとします。

AIに、

この問題の答えを教えて。

と聞けば、すぐに答えが返ってくるでしょう。

そこで終われば、自分で考える過程をAIに渡しただけになってしまうかもしれません。

しかし、そこから、

どうしてこの式になるの?
ここまでは分かったけれど、次が分からない。
もっと簡単な言葉で説明して。
小学生でも分かる例に置き換えて。
つまり、こういう意味?

と会話を続けたらどうでしょう。

私は、「なぜ?」を付けて問い続けられるのであれば、
AIの使い方を過度に制限する必要はない
と考えています。

答えそのものを聞くことさえ、必ずしも悪いとは思いません。
答えを見たあとに「なぜそうなるのか」を理解しようとするのであれば、
そこから学習を始めることもできます。

Web検索にはなかった「分からないところから聞き直せる」という特徴

この点は、従来のWeb検索と生成AIの大きな違いだと感じています。

Web検索では、検索結果からページを探し、
書かれている内容を自分で読み解いていく必要があります。

もちろん、それ自体にも重要な学習効果があります。
しかし、説明の途中で分からなくなったとき、そのWebページに
「もう少し簡単に説明して」とお願いすることはできません。

生成AIなら、

そこまでは分かった。
でも、この部分だけ分からない。
別の言い方で説明して。
具体例を使って説明して。

と、自分の理解度や言葉に合わせて連続して質問できます。

分からないところを深掘りし、
自分が理解できる表現になるまで説明を変えてもらえる。

私はここに、生成AIを教育に利用する大きな可能性があると考えています。

AIチューターで学習成果が高まった研究もある

生成AIを学習に活用する研究も進んでいます。

2025年6月に学術誌「Scientific Reports」に掲載された、
ハーバード大学の物理学授業におけるランダム化比較試験では、
大学の物理学入門科目の学生を対象に、
AIチューターによる学習と教室でのアクティブラーニングを比較しました。

研究対象として分析された学生は194人です。

その結果、教育学や学習科学の知見を踏まえて設計されたAIチューターを利用した学生は、
教室でのアクティブラーニングと比較して、
より短い学習時間で高い学習成果を示したと報告されています。

ただし、この研究を「ChatGPTを自由に使わせれば成績が上がる」と解釈するのは適切ではありません。

この研究で使われたのは、
学習内容に応じたプロンプトや足場かけ(scaffolding)を組み込んだ
教育用に設計されたAIチューターです。

つまり、重要なのはAIを使うことそのものではなく、
「どのように考えさせるAIにするか」だと考えられます。

ITエンジニアとしてAIを使って感じること

私はシステム開発の仕事でも生成AIを日常的に利用しています。

そこで強く感じるのは、
AIの間違いに気付くために、必ずしもすべての知識を持っている必要はない
ということです。

もちろん専門知識は重要です。
しかし、それ以前に重要なのが、

「自分はいま何をしようとしているのか」を明確に理解していること

です。

例えばAIにプログラムを書いてもらったとします。

細かなコードをすべて暗記していなくても、

  • この機能はこう動いてほしい
  • このデータはここに保存されるべき
  • この操作をしたときには、この結果になってほしい

という目的が自分の中ではっきりしていれば、
AIが出した答えが目的からずれていることに気付きやすくなります。

逆に、何を作りたいのか自体が曖昧な状態では、
AIがもっともらしい答えを返してきたとき、
それが本当に自分の求めていたものなのか判断することが難しくなります。

これは、プログラミングに限った話ではないと思います。

AI時代に必要なのは「理解力」と「言語化する力」

生成AIは、魔法のように何でもやってくれる道具に見えます。

しかし、実際に使い込むほど、
AIを上手に使うためには、人間側にも能力が必要だ
と感じます。

私が特に重要だと考えているのが、
理解する力と、それを言語化する力です。

  • 自分はいま何をしようとしているのか
  • 何が分からないのか
  • AIの説明のどこまでは理解できたのか
  • 次に何を知りたいのか
  • どんな結果になってほしいのか

これらを自分自身で理解し、言葉にできなければ、
AIに適切な問いを投げることができません。

反対に、

ここまでは分かった。でも、なぜここからこうなるの?

と説明できる子どもにとって、AIは非常に優秀な学習相手になり得ます。

AI時代だから基礎的な能力が不要になるのではありません。

むしろ、
自分が何を理解していて、何を理解できていないのかを把握し、
それを言葉にする能力の価値が高くなる

のではないでしょうか。

文部科学省も「問いを立て続けること」の重要性を示している

文部科学省は2024年12月26日、
「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を公表しました。

このガイドラインは、学校現場で生成AIを一律に禁止したり、
反対に利用を義務付けたりするものではありません。

基本的な考え方として、
「学校現場における人間中心の生成AIの利活用」

「生成AIの存在を踏まえた情報活用能力の育成強化」
が示されています。

また、生成AIの出力について、
それはあくまで「参考の一つ」であり「最適解とは限らない」と認識したうえで、
最後は人間が判断し、成果物に責任を持つという姿勢が重要だとしています。

さらに、児童生徒が生成AIを活用するうえでは、
適切な課題設定や指示文によって求める出力を得るだけでなく、
その真偽や適切性を判断することが前提になるとしています。

そのため、
各教科で学ぶ知識、文章を読み解く力、批判的に考える力に加え、
「問題意識を常に持ち、問いを立て続けること」がこれまで以上に重要になる
と示されています。

これは、私が実際にAIを使う中で感じていることとも非常に近いものです。

AIに正解をもらう力ではなく、
自分が何をしたいのかを理解し、問い続ける力

AIが普及するほど、むしろ人間側の理解力と言語化する力が重要になるのだと思います。

子どもたちはAIの間違いにも気付き始めている

子どもはAIの回答を何でも信じてしまうのでしょうか。

ベネッセの調査では、
生成AIの回答について「間違っていると思ったことがある」と回答した小学生は約6割でした。

また、NTTドコモ モバイル社会研究所の同じ「2025年親と子の調査」では、
生成AIを利用している小学生・中学生の約半数が、
「AIの答えをそのまま信じないようにしている」と回答しています。

中学生では、
49%が「自分で考えることも大切にしている」
43%が「個人情報を入力しないようにしている」
と回答しました。

一方で、小学生・中学生ともに1割以上は
「特に気を付けていることはない」と回答しています。

子どもだからAIをすべて信じる、と単純に考える必要はありません。
しかし、何も教えなくてよいわけでもありません。

大人ができることは、

AIは何て言っていた?
それはどうして?
本当にそうかな?
別の方法はないかな?

と、一緒に考えることではないでしょうか。

「AIを使わない教育」ではなく「AIを使って考える教育」へ

UNESCO(国際連合教育科学文化機関)は2024年、
学習者向けの「AI Competency Framework for Students」を公表しました。

この枠組みでは、AI時代の学習者を単なるAIの利用者ではなく、
責任ある利用者であり、AIとの共同創造者として捉えています。

AIに関する能力として、
「人間中心の考え方」「AI倫理」「AIの技術と応用」「AIシステム設計」の4領域、
12のコンピテンシーを示し、
それらを「理解する(Understand)」「適用する(Apply)」「創造する(Create)」
の3段階で育成する考え方を示しています。

生成AIがこれだけ社会に組み込まれ始めている以上、
子どもから完全に遠ざけ続けることが最善とは限りません。

大切なのは、
AIに考えてもらうのではなく、AIを使って考える経験を作ること
ではないでしょうか。

家庭でできる、たった一つの使い方

難しいプロンプト技術を教える必要はありません。

例えば子どもがAIを使ったあとに、

それは、どうして?

と一つ聞いてみる。

子ども自身もAIに、

なぜそうなるの?
もっと簡単に説明して。
別の例で説明して。
答えは言わずにヒントだけ教えて。

と聞いてみる。

それだけでもAIは、
「答えを出してくれる機械」から
「一緒に考えるための道具」
に変わります。

Minecraftの中に「何でも答えないAI」がいたら?

M-Raisingでは、子どもたちが興味を持って取り組める学びについて考えています。

例えばMinecraftの世界で、どうしても渡れない川にたどり着いたとします。

そこにAIを使ったNPCがいる。

子どもが、

橋を作って。

と言っても、完成した橋を出してくれるわけではありません。

代わりに、

向こう岸まで何ブロックある?
どんな材料が使えそう?
どこから作り始める?
うまくいかなかったのは、なぜだと思う?

と問い返してくる。

分からなくなったらヒントをくれる。
別の方法を聞けば一緒に考えてくれる。

そんなAIなら、答えを与える存在ではなく、
子どもの「なぜ?」を引き出す存在
にできるかもしれません。

また、教育コンテンツを提供する側でも、
問題、ストーリー、課題、ヒントなどの原案作成にAIを活用することで、
より多様な学習体験を作れる可能性があります。

AIを使うこと自体を目的にするのではなく、
子どもが考えたり、試したり、作ったりするためにAIを使う。

M-Raisingでは、そんなAIとの付き合い方を考えていきたいと思っています。

最後に――「AIを使った?」より「なぜ?」を聞いてみる

生成AIについては、これからも新しいサービスが登場し、
できることも増えていくでしょう。

そのたびに「使わせるか、禁止するか」を考えるよりも、
もっと長く使える考え方があります。

それが、
「なぜ?」を問い続けることです。

AIが出した答えにも、自分自身の考えにも、

なぜそうなるのだろう?

と問いかけてみる。

そして、自分が分からないこと、知りたいこと、やりたいことを言葉にする。

生成AIが当たり前に存在する時代だからこそ、
理解力と言語化する力が、
これまで以上に大切になるのではないでしょうか。

AIに考えてもらうのではなく、AIと一緒に考える。

子どもたちに生成AIを使わせるとき、
大人が最初に教えるべきなのは、
特別なプロンプトの書き方ではなく、
もしかすると、たった一つの言葉なのかもしれません。

「なぜ?」


参考資料・出典

  1. NTTドコモ モバイル社会研究所
    「【子ども】生成AI利用率 中学生は前年比約3倍で4割を超える」(2026年3月12日)

    https://www.moba-ken.jp/project/children/kodomo20260312.html

    調査概要:2025年11月、全国の小学生・中学生とその親1,200組、訪問留置調査。
  2. NTTドコモ モバイル社会研究所
    「【子ども】小中学生の生成AI利用者の約半数は『AIの答えをそのまま信じないようにしている』」(2026年6月11日)

    https://www.moba-ken.jp/project/children/20260611.html

    調査概要:2025年11月、全国の小学生・中学生とその親1,200組、訪問留置調査。
  3. ベネッセ教育情報
    「調査で判明!ここ3年で生成AI利用はどれだけ広まったか?」(2026年2月18日)

    https://benesse.jp/kosodate/202602/20260218-1.html

    調査概要:株式会社ベネッセコーポレーション「生成AIの利用に関する意識調査」。
    小学3~6年生とその保護者1,032組、2025年11月5日~6日、インターネット調査。
  4. ベネッセ教育情報
    「AI利用調査から明らかに!生成AIが不安な人は知っておきたい3つの真相」(2026年2月25日)

    https://benesse.jp/kosodate/202602/20260225-1.html

    調査概要:株式会社ベネッセコーポレーション「生成AIの利用に関する意識調査」。
    小学3~6年生とその保護者1,032組、2025年11月5日~6日、インターネット調査。
  5. 文部科学省
    「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」(2024年12月26日)

    https://www.mext.go.jp/zyoukatsu/ai/about.html
  6. Kestin, G., Miller, K., Klales, A. et al.
    “AI tutoring outperforms in-class active learning: an RCT introducing a novel research-based design in an authentic educational setting.”
    Scientific Reports 15, 17458 (2025).

    https://www.nature.com/articles/s41598-025-97652-6
  7. UNESCO
    “AI competency framework for students” (2024)

    https://www.unesco.org/en/articles/ai-competency-framework-students


※本記事で紹介する調査結果・研究結果は、それぞれ調査対象、調査方法、年齢層、利用環境が異なります。
個々の数値をすべての子どもにそのまま一般化できるものではありません。
※生成AIサービスには年齢制限や保護者同意などの利用条件があります。
子どもが利用する場合は、各サービスの最新の利用規約をご確認ください。
※本記事の調査・資料情報は2026年9月時点で確認したものです。

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